共生レストラン

障害持つ人が生き生き働く
共生レストラン


 障害を持っていても働きたい。社会の一員として暮らしていきたい-そんな願いをかなえるため、福祉施設が運営するレストラン、カフェが京都府北部に次々と誕生し、それぞれに人気を得ている。店への評価は自分たちへの評価でもあり、人気の高まりは働く障害者たちの自信になる。障害者と健常者が共に暮らす共生時代のレストラン、カフェを巡った。

福知山市
地域に愛され
あまづキッチン

 福知山市勅使の国道175号線沿い、移転した天津小学校の旧グラウンドに建つ「あまづキッチン」に、8月11日夕刻、にぎやかな歌声と笑い声が響いた。運営する社会福祉法人ふくちやま福祉会による「納涼祭」が開かれ、応援する人や地域の人、キッチンのファンたちで広場(駐車場)がいっぱいに。施設の人たちにとって「周囲に受け入れられている」ことを強く実感する時間だった。


【写真】大勢の人でにぎわった納涼祭

 あまづキッチンにはレストランとベーカリー、アイスクリーム工房があり、15人の障害者とサポートする職員13人が働く。メーンで仕事をするのは、障害者たち。だが店の中にも外にも、障害者が働く施設だとの表記は無い。管理者の薮見ひづるさんは「あえて記していません」という。その理由を「障害者だからというのを言い訳にしない覚悟。普通のレストランと同列にやっていくためです」と明かす。

【写真】厨房

 全てが健常者と同等に出来るわけではない。接客にしても、混むと注文を受けることにいっぱいいっぱいになって、あたふたとする。「でも、健常者でも初心者のうちは、そうですよね」と薮見さん。客から言われたことが分からない時には、分からないままにせず職員に伝えることを約束ごとにするなど、サポートしながら、少しずつ「出来ること」を増やしてきた。

【写真】白神こだま酵母を使ったパン。仕込みに3日かける

 今ではみんなが貴重な戦力。野菜の下ごしらえなどの仕込み、カレーの味を決めるスパイスの計量などなど。「各自、出来ないことはいっぱいあるけど、得意なこともある。それを見つけ、伸ばし、増やしていくのが私たちの役目です」と力を込める。

 もちろん、自分たちだけでやっていけるわけではない。多くの人たちの支えがあってこそで、地元の支えも大きい。地域との共生も、大きなテーマだ。毎週土日と祝日に朝市を開き、地元の人たちが新鮮野菜を持ち寄っているのは、共に支え合う一つの現れ。大雪の際に、近所の人が機械を使って除雪してくれたことがあった。「ああ、地元に受け入れてもらっているんだ」と、うれしかったという。

 先日の納涼祭。7月豪雨災害で地域に大きな被害が出た直後でもあり、開催を悩んだが、地元の人たちの声が、開催に踏み切らせた。「子どもたちも楽しみにしてるし、ここはもう地域の施設。納涼祭は地域の祭りなんやから」。


「農福連携」でアイスをデパ地下販売

【写真】

 ほかの産業分野との共生もある。農業と福祉、双方の課題を解決しながら協力し合う「農福連携」がその例。あまづキッチンのアイスクリーム工房で手がける「収穫のアイス」は、京都府の農福連携事業で、農業サイドからも支援を受け、イチゴやクリなど地元の農産物をたっぷり使って独特の味を作り上げた。農福連携のおかげで、百貨店の高島屋での販売も始まった。「激戦区」のデパ地下で評価を得て、今年の歳暮ギフト品に採用された。

あまづキッチン
福知山市勅使(上天津)1924
(営)平日10:00~16:00/土日祝8:00~17:00
(休)水曜(冬場は平日に休みが増える)
TEL0773-33-0055

【メニュー一例】
カツカレーセット1100円
ビーフシチューセット1100円
手ごねハンバーグセット900円
日替わりプレート 800円


綾部市
親子が集う絵本カフェ
サクラティエ

 地域との共生は、綾部市青野町のワークショップ「サクラティエ」も大事にしてきた。社会福祉法人綾部福祉会が運営し、「絵本カフェ」として市民に親しまれている。

 建物は市の児童公園と一体になっていて、「保育園と間違われることが多いんですよ」と施設長の大槻真理子さんはほほえむ。元々はお宮さんがあって、地域の人たちにとって大切な場所だった。それが市の母子寮になり、寮閉鎖に伴い、跡地活用としてサクラティエが誕生した。市や地元の思いをくんでの施設整備だった。


 障害者の施設だけど、親子、おじいちゃんおばあちゃんも集える場所に-。そんな思いを、京都府も応援。オープン後も、障害者の社会参加のための事業があれば「取り組んでみませんか」と声がかかる。施設側も農福連携など利用できる事業は積極的に応募してきた。

 カフェの特色となっている絵本は市民からの寄付で集まった。地元の書店が大量に寄贈してくれたほか、個人からも寄せられ500冊でスタート。店内に自由に読める6畳ほどのスペースがあり、親子連れやママ友の集まりなどに人気の場所になり、絵本は増えて、いま700冊ほどになっている。

【写真】「はらぺこあおむし」をモチーフにしたはらぺこパスタ

 京都ちーびず(京都地域力ビジネス)を利用してスムージーや防災のワークショップを共催したり、折り紙教室や読み聞かせなどをする子どもナイトカフェを開いたりして、子どもたちが楽しく集える場所にもして来た。

【写真】京都ちーびずで共催した防災ワークショップ

 カフェのほか菓子工房では、原材料からこだわり、1本ずつ丁寧に焼き上げるバウムクーヘンなど、仕込みから包装まで全工程を障害者が担当。「自分たちにも出来る」ことがやりがいになり、評価が自信になり、そして支えるスタッフたちのやりがいにもなっている。

ワークショップサクラティエ
(絵本カフェCHOU CHOU サクラティエ)綾部市青野町西青野18
(営)10:00~16:00(ランチは11:00~14:00)
(休)火曜と第2・4水曜
TEL0773-43-3366

【メニュー一例】
三びきのやぎのロコモコ丼800円
そうべいさんのじごくカレー750円
はらぺこパスタ800円

舞鶴市
16年続く信頼と評価
ほのぼの屋


 府北部の共生レストランの草分けは、社会福祉法人まいづる福祉会が運営する舞鶴市大波下のカフェレストラン「ほのぼの屋」。舞鶴湾を見下ろす高台に、2002年4月にオープンした。

 本格フレンチが味わえると大評判になり、一躍「予約が取れない店」になった。当初の半年待ちなどという状況は改善され、利用しやすくなった今も、連日多くの人がテーブルに着く。

 海側に大きく開かれた建物、一流シェフが作る旬の食材を生かした料理。「非日常の空間」を演出したレストランで違和感なく給仕をするメンバー(障害者)たち。「忙しい時ほどゆっくりと」が合い言葉。店長の材木淳志さんは「おかげで開店から16年、いまだ料理をひっくり返した人はいません」と、メンバー14人に目を配る。

 「最初は、やらされている仕事、受け身の仕事をしている人もいます。テーブルクロスのアイロンがけ一つにしても『こんなシワが残っていたら、お客さんが来てくれなくなるよ』と、時にはけんかもしましたねえ」。本気で向き合い、互いの信頼を深め合う中で、一つひとつ仕事を覚えてきた。
 職員たちも色んな努力を重ねてきた。それまでTシャツにジーンズ姿で走り回っていた共同作業所の仕事からベストにネクタイ、洗練された身のこなしのギャルソンへの転身。いまではすっかり板に付き、障害者も来店客も笑顔になれる店にと奮闘している。

ワークショップほのぼの屋
(カフェレストランぷちふれんち ほのぼの屋)舞鶴市大波下滝ケ浦202-56
 ランチ11:30~15:00 ディナー18:00~21:00
 平日を中心に不定休(予約が確実)
TEL0773-66-7711

【メニュー一例】
ランチ1900円~4200円
ディナー4200円~10500円(予約制)
冠婚葬祭の食事など予算に応じて用意

宮津市
新たな夢が始まる
TEО-TОRI


 共生レストランに、今春、新しい店が加わった。社会福祉法人みねやま福祉会が宮津市波路で運営する総合福祉施設マ・ルートに、「ピクニックカフェTEO-TORI」が4月に開店した。キッチンカーを利用したオープンカフェ。地元食材を使ったスープ、おにぎり、鶏団子などのランチセット、オリジナルブレンドのコーヒーなどを提供している。

 天橋立を望む木陰のガーデンで、ピクニック気分で楽しめるとあって、子ども連れのお母さんたちがよく通ってくる。また、キッチンカーの特性を生かして、各地のイベントに出向くことも多い。

 担当の山下真依さんは「使ってる野菜の説明とかをきっかけに、市民との交流が広がったりしています」と話す。走り出したばかりの店が、いま大きな希望を膨らませている。


ピクニックカフェTEO-TORI宮津市波路716-3(マ・ルート内)
(営)11:00~17:00(ランチ11:00~14:00)
(休)土日祝(その他イベント参加時など)
TEL0772-20-1150(マ・ルート)

【メニュー一例】
ピクニックセット500円
コーヒー
 マ・ルートブレンド350円
 天橋立ブレンド350円