伝統漁法を保存 あやべ山家観光やな漁

伝統漁法を保存
あやべ山家観光やな漁


(写真)興味津々でやなに上がる人たち。本来は、川を堰き止め魚をやなに誘導するが、由良川ではそれが許可されないため、取れる魚は少ない。それでも鮎やウナギがかかる

 京都府北部を流れる清流・由良川の中流、綾部市下原町の由良川左岸河畔では、毎年9月1日から30日まで、「やな」を眺めながら、自然とふれあい新鮮な鮎が味わえるイベント「あやべ観光やな漁」が開かれている。

平安から続く伝統漁法

 「やな漁」とは、川の落差がある急流に、木や竹などでスノコ状の台を造った「梁(やな)」を仕掛けて、上流から泳いできた魚がかかるのを待つ漁法。平安時代後半の寛治年間以降から1000年余りの歴史があるという


(写真)やな漁の仕掛け

 その仕掛けが実にユニークだ。スノコは、上流側は水中、下流側は水上にと傾いて設置されている。川の水はスノコの隙を通って流れるが、上流から泳いできた魚は傾きのせいでスノコの上に打ち上げられるという仕組み。秋(9月)に産卵のために川を下る鮎などに効果的な漁法だ。

 

山家には7基のやながあった

 山家地区の由良川や、その支流の上林川には、やな漁に適した急流が多く、江戸時代からやな漁が盛んに行われていた。かつては由良川上流から、戸奈瀬やな、上原やな、鷹栖(たかのす)やな、下原上やな、下原下やな。上林川上流から、橋上(はしがみ)やな、町(東山)やなと7基のやながあったという。やなに入る獲物は、ほとんどが大きな鮎、ウナギ、ズガニで、山里の貴重なタンパク源として食べられていた。

 しかし、1953年(昭和28)9月の台風13号による大水害(二十八水)で、すべてのやなが流失。その後、姿を見ることはなかった。

約40年をへて復活

 再び由良川にやなが仕掛けられたのは1992年(平成4)のこと。山家地区商工繁栄会の有志7人が「山家観光やな漁保存会」を発足させた。その後「あやべ山家観光やな漁保存会」に改称。副会長を務める村上保武さん(75歳)は発足メンバーの1人で、当時のことを知る唯一の会員だ。
 「そもそもは昔からの伝統を子どもたちに伝えていきたいという思いで始めました。岐阜県の長良川に視察に行き、試行錯誤のうえ、その年の9月に復活させました」と話す。

 約40年ぶりの復活、しかもやな漁がめずらしかったこともあり、マスコミなどにたびたび取り上げられ、その影響で当初は1か月で8000人もの観光客が訪れた。近年は2000人程度というから、いかに人気のイベントだったかが分かる。

 「山家駅から行列が続くこともありました。このにぎわいに、JRでは、京都駅から臨時列車を出そう、仮設の駅を造ろうなどという話もあり、実際に相談に出向いたこともありました」と村上さんは話す。

 以来25年間、一度だけ台風の大洪水でやなが流され、期間途中で終了せざるを得ない状況になったことがあったが(売店のみ公民館で開店)、毎年9月の1か月間行われる観光やな漁は、秋を運ぶ風物詩として綾部市の重要な観光資源となっている。


(写真)売店・簡易食堂は一昨年、水害を受けにくい高台に移された

(写真)重機を使ってやなを組み立てていく。今年は8月27日に作業が行われた

伝統漁法の保存、農村都市交流を

 やなの準備から、設置期間の来場者への案内、河川増水時の対応など、やな漁の運営に当たるのが「あやべ山家観光やな漁保存会」である。昨年4月から3代目会長を務める木下泰洋さん(73歳)は、「現場の負担は少なくありませんが、地域のみんなが一丸となって取り組んでいます」と話す。


(写真)今年やなにかかった立派な鮎を手にする木下会長

 活動に対しての評価も高く、発足から6年たった1998年(平成10)には、市の地域産業の振興・発展に多大な貢献をしたとして「綾部市永井奨励賞」を受賞。2001年(平成13)からは、阪神大震災の被災地・神戸市長田区との交流活動を開始。毎年「神戸・長田たなばたまつり」の会場に出向き鮎の山賊焼きを提供している。


(写真)神戸・長田たなばたまつりでは1000匹の鮎を豪快に焼く

 長年にわたるこうした取り組みから、2015年(平成27)8月1日には「市制施行65周年記念特別表彰(農林商工功労)」を受賞した。

 「受賞を励みに、これからも伝統漁法の保存、農村都市交流を、地域のみなさんと一緒に進めていきたいと思っています」と木下会長は言長は言う。

(写真)市制施行65周年記念特別表彰の盾

9月10日(日)に「鮎まつり&ふれあいコンサート」


(写真)「鮎まつり&ふれあいコンサート」でにぎわう観光やな(昨年の様子)。20以上のテントが立ち、魚のつかみ取り(手前の池)も用意される。

 9月30日(土)まで開催中の「あやべ山家観光やな漁」だが、9月10日には最大のイベント「鮎まつり&ふれあいコンサート」が開かれる(午前11時~午後3時)。当日は、河川敷に設けられた会場に地元特産品や、鮎の塩焼きをはじめグルメを販売する模擬店が並び、地元太鼓の演奏や歌謡ショー、ふれあいコンサートなど多彩な催しで盛り上がる(当日は綾部駅南口から無料シャトルバスも運行)。神戸市長田区からもバスを連ねて大勢の人が訪れる。


(写真)ふれあいコンサートでは様々な出し物が登場(写真は過去のもの)

 また、9月17日(日)・18日(月・祝)には、やなに上がってきた魚を手づかみにする「やな漁体験」が行われる。体験料1000円で、3日前までに要予約。川の水量などによって実施できない場合もある。


(写真)炭火で30分ほどかけて焼かれた鮎は骨まで軟らかい(1匹600円)。左は古里の味がする鮎めし(500円)

【あやべ山家観光やな漁】
■日時/9月1日(金)~30日(土)10:00~15:00
■場所/綾部市下原町 由良川左岸河川敷
■内容/売店、簡易食堂で鮎の塩焼き、鮎弁当、鮎味噌汁、飲み物、お土産物などを販売
■問い合わせ先/TEL080-8538-0219(期間中のみ)
■会場へのアクセス
車:国道27号、府道450号沿いにのぼりや看板が立っている
電車:JR山家駅から徒歩20分
バス:あやバス「山家」バス停から徒歩20分