お寺でいただく精進料理

しばし日常を離れて
お寺でいただく精進料理


 肉や魚、卵など動物性の食材を使わずに作る「精進料理」。お坊さんしか食べられない特別なものかと思われがちだが、おもてなし料理として一般の人にも提供しているお寺がある。健康的であることはもちろん、限られた食材をおいしく食べられるようにと随所に工夫が施されていて、目にも楽しい。世間の喧噪から離れた静かな境内でのんびり味わうと、心身ともに癒やされる。

京丹後市 
松渓山 三要寺



 南北朝時代の1337年創建の古刹、京丹後市大宮町の三要寺では、旬の食材をふんだんに使った本格的な精進料理が味わえる。

 作っているのは「実は、料理人になりたかった時期もあった」という副住職の北島篤志さん。京都市内の有名精進料理店で7年間修業した経歴を持つ。


(写真)副住職の北島さん。お寺が子どもの遊び場だったかつてのように人が集まる場になれば、と精進料理をはじめた

 開山から名をとった座敷「崙山」に通され、庭の景色を眺めつつゆったり過ごしていると、副住職がお膳に乗せて料理を運んできてくれる。
  「普段、肉や魚など命あるものを食べられることのありがたみに気づいてもらえたらと、食事の前に少しお話をします。でも、とにかく楽しく食べていただくのが一番です」とにこやかに話す。
 料理内容は仕入れで変わってくるが、これからの時期はやはり、夏野菜がメイン。肉厚でみずみずしい賀茂ナスの田楽、キュウリやミョウガの冷や汁、パプリカやオクラを閉じ込めたお出汁のゼリーなど、いずれも目に鮮やかで食欲をそそる。
 和食を基本にしながら、イタリアンやフレンチを取り入れていて、豆乳チーズとアボカドの和え物、枝豆ソースをかけるそうめんなど斬新な一品もある。


 一皿一皿堪能していると、いつの間にかお腹いっぱいになるが、野菜中心なので胃もたれはしない。仕込みには2日間かかるといい、調理法を熱心に聞いて帰る人も多い。

 精進料理は3000円、4000円、5000円の3コースある(税別)。5人以上で3日前までに予約を。


(写真)新しい自己の発見や精神力、行動力の向上に役立つという、坐禅、写経体験。新人研修で利用する企業もあるそう

 同寺では写経、座禅体験ができる(いずれも要予約)。集中することで、心がすっきりする。貴重な体験をと、若いカップルや外国人が訪れることもある。



松渓山 三要寺
京丹後市大宮町善王寺77
TEL0772-68-0193

 

豊岡市
円覚山 宗鏡寺(すきょうじ)

 「たくあん漬け」を考案したと伝えられる沢庵和尚によって再興されたお寺。ここでは座禅と精進料理を併せて体験できる。
 料理は2種類あり、1つは旬の野菜を使った「精進天丼」。釜炊きごはんに揚げたてを乗せていただく。寺の名物たくあん漬けが付く。


精進天丼

 もう1つの「家光膳」は、沢庵和尚が将軍家光に供した食事を再現したもの。ごはんに出汁をかけた素朴な料理だが、箸をつける順番など禅宗の所作を教わりながら、当時の家光の気分になって味わうと、食べることのありがたさがしみじみ感じられる。


家光膳

 どちらも住職がたてる抹茶とお菓子付き。座禅は本格的な禅堂で行う。呼吸と姿勢を正し25分程度集中、終わったあとは気分が軽やかになる。料理と座禅体験で2800円(税込)。1週間前までに予約を。


住職の小原游堂さん

豊岡市出石町東條33 
TEL0796-52-2333 
受付時間9:00~16:00



丹波市
西天目瑞巖山 高源寺

 鎌倉時代の1325年開山の古刹。四季折々に美しい表情を見せる「天目楓」がトンネルのように生い茂る石段を登った先にある方丈の客間で精進料理を食べることができる。開け放たれた窓から見える楓の緑が目に優しく、真夏でも涼やかな風が吹き抜けて心地よい。

楓の葉が茂り涼しげな境内

 料理は新鮮な地元の野菜を中心に使って、住職の山本祖登さんが手作りしている。こんにゃくでお刺身、豆腐と山芋で鰻の蒲焼きに見立てるなどの工夫が随所にあり、天目楓が描かれた京焼の器に彩りよく盛り付け、運ばれてくる。味付けには和食の五味(甘味、酸味、塩味、苦味、旨味)をすべて盛り込んでいるという。住職との会話も楽しみながら、じっくり味わいたい。


6000円のコース

 4500円、5000円、6000円の3コース(税別)。4人以上で、4日前までに予約を。

山本祖登住職

丹波市青垣町桧倉514 TEL0795-87-5081


丹波市
萬松山 慧日寺(えにちじ)


 1375年、室町幕府3代将軍・足利義満の管領・細川氏により建立された臨済宗の寺。塔頭寺院18、末寺46を数える一大道場として栄えたが、明智光秀の丹波攻め(1575年)などにより焼失。今の建物は1670年以降に再建されたもので、2014年12月に方丈、庫裏、経蔵、鐘楼、裏門が国の有形文化財に登録された。
 その庫裏の書院から中庭を眺めながら、住職ご兄弟らが四季折々の材料を使って手作りする精進料理を食べることができる。飛竜頭、ごま豆腐、煮物、和え物など8品からなる「朱膳」(3000円)と、道場ならではの、修行僧の作法が体験できる「持鉢」(1000円)の2種(ともに税込)。

「朱膳」

「持鉢」

7人以上で、1週間前までに予約を。


茅葺き屋根が美しい本殿と門脇靖巖住職

丹波市山南町太田127-1 
TEL0795-77-0354


篠山市
安泰山 大國寺


 大化年間(飛鳥時代)の開創。室町時代初期に建てられたという和様と唐様の折衷様式の本堂は、当時の最新技法を取り入れた建築物として、1961年12月に国の重要文化財に指定された。境内には、サクラ、モミジなど、様々な花や山野草があり、四季を通して美しい表情をみせる。また、厳かな空間一帯は、特にコスプレ撮影の聖地としても知られている。
 住職の奥様が手作りする特製「精進ランチ」(1000円税込)は、黒豆の煮豆やちび黒ご飯、山菜の天ぷらなど、安心安全な地産品を使った献立が5品。その内容は季節によって変わる。


精進ランチ

 2人以上で、3日前までに予約を。写経、座禅、煎茶、本堂内拝観など体験コースも充実している。


国重要文化財の本堂と酒井裕圓住職

篠山市味間奥162
TEL079-594-0212