北近畿の どぶろくをたずねる

 

白く濁る、素朴なお酒
北近畿のどぶろくをたずねる


 お正月に各家庭で多く飲まれた日本酒。その原型で、発酵させただけのお酒「どぶろく」が人気を集めている。
北近畿には醸造できる特区があり、どぶろく作りが盛ん。
お酒好きな記者としては、取材せずにはいられないと、北近畿にあるどぶろくの作り手を訪ねてきた。
 どぶろくの歴史は古く、稲作が始まったのと同時期ともいわれている。ご神物や庶民の楽しみとして、農家や家庭で気軽に作られていたが、明治時代、酒税法により自家製造が禁止された。今は規制緩和されたことにより、「どぶろく特区」と認められた地域のみ、免許を取得すれば製造ができるようになった。
 どぶろく作りは非常に手間がかかる。使う米は自家製であることが条件になっているため、米作りから始まる。米、麹など材料をそろえた後も、仕込みに1日~2日。更に発酵に2~3週間。その間、毎日温度管理をし、飲み頃を見極めて、瓶に詰める。この工程はほとんどが手作業でされる。発酵が進んでいくので、作り置きは出来ず、在庫を見ながらこまめに仕込む。作り手はみな、どぶろくを「生きている」と表現し、子どものように慈しみながら育てている。

 

【豊岡市但東町】
農家民宿 八平だるまの  
八平達磨


 豊かな緑の山間にある豊岡市但東町赤花地区。ここでこんにゃく作りやそば打ちなどの農村体験ができる民宿「八平だるま」を切り盛りする能勢勇さんが「八平達磨」を作っている。
 民宿のメニューにしようと、2003年に関西で初めて、どぶろくの製造免許を取得した。何度も失敗を繰り返し、満足する出来にたどり着つくまでに5年かかった。「(勇さんは)猪年なので、前しかみえない性格なんです」と笑う妻の初美さんは味見役。初美さんがおいしいと認めた味は、お客さんにも好評なのだという。今ではどぶろく目当てに訪れる人も多い。
 囲炉裏を挟んで二人の話を聞きながら、一杯いただいてみる。とろりとした口当たりの中にほのかな炭酸の刺激があり、芳醇な香りが鼻を抜ける。甘口で、アルコール度も10%前後と飲みやすい。宿を利用すると、初美さんお手製のさしみこんにゃくや、今の時期なら自家製野菜たっぷりの鍋と一緒に楽しめる。
 ほかに、すっきりとした飲み口の「玄さんの晩酌」、「八平達磨」に紅麹を混ぜたピンク色の「玄さんの初恋」もある。
 このほど全国的にも例がない、大麦入りの「八平達磨 むぎ畑」を開発。さわやかな味わいで、麦の粒も良いアクセントになっている。
 全ての種類1本900mℓ2000円。
所/豊岡市但東町赤花570-1 
TEL0796-56-1116 


兵庫県立工業技術センター
◎井上先生に聞く豆知識
どぶろくは健康の強い味方
 米と麹、酵母菌などを含むどぶろくは、体によい作用がたくさんあるといわれる。兵庫県立工業技術センターで醸造・発酵技術の研究をしている井上守正先生によると、医学的に認められるどぶろくの効能はとても幅広い。糖尿病予防、肥満防止、肝臓病予防、がん予防…などなど。また、肌の保湿や美白効果もある。カロリーは高めだが、燃焼も早いということで、それほど気にしなくても良さそう。ただし、何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。個人の適量を守ることが大切。

【福知山市大江町】
棚田の里の  
大江のどぶろく
棚田の里


 日本の棚田百選に選ばれた美しい農村、福知山市大江町毛原。この地に魅せられた川瀬保さん、節子さん夫婦は10年前に滋賀県から移住し、カフェとコテージを開いている。
 どぶろく作りは2010年から。13年の全国どぶろく研究大会では濃芳醇の部に近畿で初めて入賞した。お米は棚田で育てた酒米「京の輝き」を使う。飯米よりも、もろみの溶けが良いのだという。
 おすすめの飲み方を教えてもらった。はじめの一杯は上澄みだけ。フルーティーな香りが鼻を抜けてとっても爽やか。次に、ゆっくりと瓶を振ってから、一杯。ほのかな甘さと芳醇に香る濃厚なもろみが口の中で溶け、つるりと喉を通っていく。ついつい、もう一杯、もう一杯…。賞味期限は1カ月程度というが、「心配しなくても、すぐになくなるよ」と保さんが笑うのもうなずける。
 料理上手の節子さんは、瓶の底にたまったもろみを、粕汁に入れる。味が数段アップするのだとか。
 1本720mℓ1728円。年末から正月にかけては紅麹が入ったピンク色の「棚田の春」(1本1944円)を限定販売。さらりとした飲み口の「棚田の里 淡麗」は500mℓで1080円。
所/福知山市大江町毛原345。
TEL090-6984-3283。
★京都丹後鉄道大江駅でも販売。


【福知山市大江町】
そば処いわとの 
大江のどぶろく
鬼のどぶROCK


   鬼伝説の里、福知山市大江町で「そば処いわと」を営む荒木敏明さんは2011年から製造を始めた。自家製コシヒカリを天日干しして使うことで、お米の甘みをより多く引き出している。飲み口はさらりとしていて、一昨年の全国どぶろく研究大会でも、淡麗の部で入賞した。
 白濁した上澄みが黄みがかってくるまで寝かせて、熟成された味を楽しむのもおすすめ。
 1本720mℓ1680円。10月から6月のみ販売。「そば処いわと」は土日営業。
所/福知山市大江町内宮175-1(観光センター内)
TEL0773-56-2327。
★福知山市の「酒屋くん」、舞鶴市の舞鶴とれとれセンターでも買える。



【舞鶴市浜】
居酒屋 どぶろくベェー の  
 ろくベェー


  舞鶴市浜、国道27号線大門五条の交差点を商店街へ曲がると、左手に「どぶろくベェー」の暖簾と赤ちょうちんが見える。カウンターとテーブル席が2つの小さな居酒屋。ここを経営するのが「どぶろく界の異端児」と呼ばれる橋本泰弘さん。
 どぶろくは甘口が多いが、「ろくべェ-」は通常の4倍近い辛口。アルコール度数も16度~19度と高い。
 口に含むと一瞬、お米の甘みを感じるも、あとはキリリと辛口。後味がすっきりするので、いくらでも飲めてしまう。発酵食品との相性がよく、お店のメニューでは、へしこの刺身がよく合う。ジュースと割って楽しむ人もいる。
 橋本さんが、「一番おいしい」と自負するのは、ビン詰めする直前。炭酸が強く利いたフレッシュな味わいで、時期を狙って来店する常連客もいるという。
 300mℓ入り700円、720mℓ入り1500円。営業時間は午後6時半から。日、月曜日休み。地方発送も受ける。
所/舞鶴市浜406-1
TEL090-2113-0515。

 



情報はいずれも2016年1月9日号のものです。