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心浮き立つ 春の和菓子

 うららかな日差しに誘われ出かけてみれば、あちらこちらで春の気配。季節を映す和菓子の世界も春らんまん。一目見て心が浮き立ち、食べればほっこり。華麗な職人技にも注目の、春の和菓子を訪ねて歩いた。


 淡いピンク、薄緑、黄の3色の「練り切り」※であん玉を包み、茶巾で絞ってうねりを付ける。羊羹で作ったさくらの花びらを散らして出来上がったのは、上生菓子『春の訪れ』。あたたかい南風が、春を連れてくる様子を表現している。
 
春の訪れ

 「和菓子は目で味わうもの」と語るのは、舞鶴市北田辺の「双鶴庵」三代目・米山隆一朗さん。味はもとより、見た目の美しさにこだわった菓子作りをしている。特に、お茶席で用いられることが多い上生菓子は、季節の花鳥風月に見立てて創作することが多く、巧みな職人技と鋭い感性の見せどころ。まるで繊細につくりこまれた芸術品のようで、思わず見入ってしまう。

 つくね芋と白あんを混ぜた生地をピンクと白で色づけし、ザルでこしてそぼろ状に。それを箸で器用にあん玉にくっつけていくと、満開に咲き誇る景色を連想させる『さくら』の完成。ふんわりとした雰囲気と芋の優しい風味がマッチして人気がある。「洋菓子が空気を含んだ菓子だとすると、和菓子は水を閉じ込める菓子」だといい、舌の上ではしっとり軟らかく、さらりとした口どけに仕上げている。
 
さくら

 ザルでこす技法で作った和菓子は総称して「きんとん」という。初夏は生地を薄紫にしてアジサイ、秋はくすんだ黄や茶の生地で紅葉、冬は白で雪、と季節を表現することができる。

 微妙な色づかいも大切。わずかな違いで印象が変わってしまうため、米山さんは、色付けは必ず朝の自然光の中で行うという。

 双鶴庵では、四季よりもっと細かく、二十四節気を目安に作る上生菓子3~5種が常にショーケースを彩る。とくにこの時期は明るい色味を多く使うので、大雪に苦労した冬をすっかり忘れさせてくれるほど華やか。贈り物にはもちろん、自分へのご褒美に、つい買っていきたくなる。

※彫刻や細工をしやすいように、こしあんにぎゅうひを混ぜて練り上げたもの。 
 
茶巾のしぼり方を変えると、朝顔や水鳥など、さまざまな形をつくることができる。

 
ザルでこして「きんとん」を作っているところ。ザルの網目の大きさによっても出来上がりの印象は変わる

 

菓子匠 双鶴庵 そうかくあん
  昭和3年の創業。当時は、代表銘菓「鶴の里」など3品程度を製造するのみだったが、京都の老舗「塩芳軒」で修業を積んだ米山隆一朗さんが三代目を継いだのを機に「双鶴庵」と改名。季節の上生菓子、朝生菓子、名物のまんじゅうなど商品の幅を広げた。新作のアイデアに苦しむ時は、洋食など別ジャンルの本を読んだり、修業時代に描いたデッサンを眺めたり。書や華に堪能な妻の久美子さんの知恵を借りることもある。
 

舞鶴市北田辺127
TEL0773-75-0122
(営)9:00~18:00
(休)火曜日
Pあり

 

 北近畿にある和菓子の老舗名店を巡って出会った春の和菓子たち。この時期ならではの華やかでかわいい顔ぶれがそろった。目で、舌で、ご堪能あれ。


         

さくら

 白こしあんに小麦粉を加えて蒸した生地を淡いピンクに染めて、花に見立てた上生菓子「さくら」(260円)。中には白あんが包まれている。ほかにも、三代目・塩見大介さんが作る、繊細でかわいい季節の上生菓子、いちご羽二重などの朝生菓子が5~8種類並ぶ。「綾人」「九鬼娘」など地元に由来した銘菓も名高い。素材は丹波地方を中心に厳選。自家製あんは丹波大納言100%。

菓匠  宮代屋 
綾部市宮代町29
TEL0773-42-0309
(営)9:00~19:00(日曜のみ18:00まで)
(休)月曜日(祝日の場合は営業)
Pあり


ちりめん羊羹

丹後ちりめんの反物をかたどった白あんの練り羊羹。1955(昭和
30)年に初代が考案。春は桜、夏はなでしこなど、季節ごとに変わる華やかな模様、ちりめんの「しぼ」に似せた表面の凹凸は、二代目・福山晴夫さんが手作業で作る。その美しさは、皇后陛下が皇太子妃時代の昭和43年9月7日に天橋立を訪問された際、お買い求められたほど。小(400g)1本1100円。

風美堂 バイパス支店 
与謝野町字石川707-4
TEL0772-42-0260
(営)9:00~20:00
(休)月1回、火曜日
Pあり 


いちご大福

 創業70年の老舗。コーヒーロールと和菓子で知られる。二代目・川見長一朗さんが15年以上前から作るいちご大福は、もち生地と丹波大納言小豆の粒あんで、最初はいちごを丸ごと包み込んでいたが、大粒のものも使うようになり今のスタイルに。これが「ケーキみたい!」と評判を呼び、ホワイトデーに1000個以上売れたこともある。3月14・15日はホワイトデーの特売を実施。150円。

川見風月堂
福知山市字東中ノ町27-1(広小路)
TEL0773-23-8336
(営)10:00~18:00
P福知山パーキング


桜きんとん

 二代目・牧大介さんが京都市の老舗「二条駿河屋」で修業を積み、京菓子伝統の味をいちずに守り続けている。市の重要文化財を模した「木の花庵もなか」が有名。春限定「桜きんとん」(270円)は、つくね芋をたっぷり練りこんだ特製のあんを使用し、豊かな香りとコクがある上品な味わい。黄と緑が美しい「菜種きんとん」も人気。上生菓子は事前予約を。

御菓子司  菊屋 
綾部市西町二丁目70
TEL0773-42-2966
(営)9:00~19:30
(休)木曜日
P西町アイタウン駐車場利用(無料)

 

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