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世界が注目する黒谷和紙


 和紙はかつて全国のいたるところで漉かれていた。しかし、近代化の流れの中で需要は減り、産地は激減した。そうした中、綾部市黒谷町では、伝統的な手漉き和紙の技術が今日まで脈々と受け継がれている。


800年前、平家の落人が始めた

 綾部市黒谷町は国道 号沿い、綾部市と舞鶴市との境にある山あいの小さな集落。紙漉きは今から800年以上前、平家の落人がこの地に隠れ住み、生活の糧として始めたと伝えられている。
 江戸時代に入り、藩が振興をはかり
 紙すき村 として発展。1872(明治5)年の職種調査では、黒谷村76戸のうち、紙職が67戸と、村のほとんどが和紙にかかわっていたことが分かる。

全国から集まった若者が職人に

 かつては京都府北部でも50か所以上で漉かれていたという和紙だが、生活様式の変化と産業の発展に伴い需要は減り、生産者も減少の一途をたどった。黒谷でも1996(平成8)年には生産農家が 戸まで減った。
 危機感を持った産地では、伝統的な手漉き和紙の技法をベースにしながらも、時代のニーズに合わせ多種多様な和紙製品を開発した。また、全国から希望者を募り職人を育成するなど、様々な取り組みを積極的に進めた。その結果、全国から若者が集まり、現在は 代を中心に8人の職人が紙漉きをしている。

純手漉きにこだわった製法

 黒谷和紙は古くから、傘紙、京呉服の値札、渋紙、障子紙、陸軍省携帯食の乾パン入れや蚕業用の繭袋など、様々な用途の紙を漉いてきた。一番の特徴は強さで、良質の楮を原料とし、処理から加工まですべて手作業で行うことによって生み出される。
 しかも分業はせず、楮を煮て、たたいてほぐし、紙を漉いて、乾燥する工程を1人でこなすなど、今では数少なくなった昔ながらの純手漉きにこだわった製法を受け継いでいる。

昨年、フランスと台湾のイベントに参加

 1983(昭和58)年、黒谷和紙は京都府の無形文化財に指定された。継承活動に弾みをつける明るい出来事だった。前年の82年には黒谷町に「黒谷和紙会館」が、2005(平成7)年には閉校した口上林小学校を改装して「黒谷和紙工芸の里」が開設され、資料の展示や製品の展示即売、手漉き体験などができるようになった。また、2014(平成26)年には、和紙がユネスコの無形文化遺産に選ばれ、注目度がアップ。黒谷和紙も昨年フランス(5月)、台湾(5~8月)で展示会を開くなど、その伝統の技を広く世界に紹介した。

 

周辺に自生する楮と黒谷川の美しい水を使って紙漉きが始まった。気温が低い冬場が紙漉きの最盛期で、その様子を見学することもできる

 

民芸品や紙工芸品の数々。右は札入れ、名刺入れは、綾部ゆかりのものをモチーフにした新作「綾型」シリーズ

 

黒谷和紙の「まるごと楮カレンダー」を3人にプレゼント


これまで廃棄していた原料の楮の幹から作った黒インクで黒谷和紙に印刷したカレンダー(縦55cm×横50cm、1080円、完売につき残部なし)を読者3人にプレゼント。応募はプレゼントページから。

 

黒谷の技術と暮らしを継承
林 伸次さん (47歳)
黒谷和紙協同組合理事長

 大学卒業後、1人で暮らす祖母の畑を手伝いながら創作活動をしようと綾部に帰って来ました。冬場の仕事を探す中で、黒谷和紙の研修制度のことを知り、手に職を付けたいという思いもあり、研修生になりました。それからは紙漉きばかりやっています。
 多くの紙漉きの里が姿を消す中で、黒谷和紙が続いてきたのは、 みんなで残して行こう という強い思いがあったから。そのためには、世襲がほとんどの世界で、よそからの研修生を受け入れる。漉いた紙を問屋に納めるだけでなく、製品化に取り組んだのも早かったと思います。
 今、世界遺産登録をきっかけに和紙が注目されていますが、黒谷和紙は1970年代には海外で知られていました。「紙すき村 黒谷」(著・中村元)という和紙で手作りした本が、72(昭和47)年にドイツで開催された世界の図書展で「世界で最も美しい本」としてグランプリを獲得しました。また、フランスのルーブル美術館で修復用紙として使われるなど、とくにヨーロッパでは「クロタニ」と呼ばれ評価が高い。昨年、フランスと台湾で展示会に参加させていただきました。国内外を問わずPR活動を進めていくことで、和紙の良さを再評価、再認識していただければと思っています。
 現在、8人いる職人のうち私を含め7人が地元以外の出身者です。村外者ではなにかと大変な面もありますが、伝統的な技術の保全、伝承だけでなく、その背景にある黒谷の暮らしや文化までも受け継いで次の代につないでいく。それが僕の代の役目だと考えています。


林 伸次さん

綾部市出身。その後、京都市で暮らす。京都精華大学美術学部を卒業後、黒谷和紙協同組合の研修生となり、2年後に独立。2005(平成7)年に開設の黒谷和紙工芸の里(京都伝統工芸大学校 和紙工芸研修センター)の職員として後進の指導も行う。14(平成26)年より現職。


紙漉きの実演や体験もしたフランスでの展示会(2016年5月)


 

黒谷和紙 工芸の里
3月末まで冬季休業中
(団体予約のみ受ける)
綾部市十倉名畑町欠戸31
TEL0773ー45ー1056

 


黒谷和紙会館
(営)月~金曜日 午前9時~午後4時30分
入館無料
綾部市黒谷町東谷3ー1
TEL0773ー44ー0213
※黒谷和紙の歴史など展示、製品の展示即売、紙すき体験(要予約)

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